綿貫 英彦[日本共産党福岡市議会議員]

綿貫 英彦[日本共産党福岡市議会議員]

6月議会

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6月議会

6月議会反対討論

6月議会, 議会報告

私は、日本共産党市議団を代表して、本議会に提案されております諸議案のうち、議案第157号ないし159号に反対し、討論を行います。

まず、議案第157号、「福岡市附属機関設置に関する条例の一部を改正する条例案」についてです。

本議案は、義務教育段階で使用される教科用図書、いわゆる「教科書」を、福岡市教育委員会が採択するにあたっての従来の手順・方法を見直すことにともない、「教科用図書採択諮問委員会」の名称を「教科用図書調査研究委員会」へと改めるものです。

従来の諮問委員会は小学校の図書については総数85名、中学校は90名のうち現場の教員がそれぞれ半数以上を占め、教科書を比較検討して順位をつけた答申を教育委員に提出する仕組みでしたが、新しい委員会は資料作成に教員が関わるものの、委員が30名へと大幅に減らされて、現場の教員は一人も入っておりません。しかも「答申」ではなく意見を教育委員に「報告」するだけとなり、教科書の順位もつけないため、6人の教育委員が数十種類もの教科書から選定することになります。このような制度の大改悪の実態が、わが党の質疑で明らかになりました。

現場の教員を排除することによって、選考作業が専門性、自主性のないものになり、無責任な結果を招くことになりかねません。今回の制度の見直しには、国の方針や市長、教育長の考えをトップダウンで現場に押しつけやすくする仕掛けを作りたいとの思惑が透けて見えます。

さらに、今回議案の提出の仕方は異常極まるものであったことを、厳しく指摘しておかねばなりません。

これまでの教科書採択方法については、特段問題点も指摘されておらず、適切に運営され、議会では議論されておりませんでした。しかし、今回、教科書会社と教員との不適切な関係が明らかになったことを口実に、突然採択方法の抜本的改変を打ち出してきたのであります。しかも、わが党が教育委員会に対し3週間前から聞き取りを始めたにもかかわらず、議案の有無さえも知らされませんでした。議員による調査権や質問権を実質侵害する前代未聞のやり方と言わねばなりません。市民の反対運動が広がらないうちに片付けてしまおう――そのような意図があったと言われても仕方がないほど、今回の議案提出は性急なものでした。

市教育委員会は、来年度から教科化される小学校の「道徳」教科書について、今回の新たな採択方法を適用しようとしております。これは、「愛国心」など特定の徳目を子どもたちに上から教え込み、「戦争する国」づくりを進める安倍政権の教育政策に追随し、本市でもそれを推し進めようとするものに他なりません。

したがってわが党は、教科書採択の場から、現場の専門家の意見をしめだし、政権や政治家の意向を押し付けることにつながる本議案に反対いたします。

次に、議案第158号、「福岡市中小企業振興条例案」についてです。

今回の議案は、1973年に制定された本市の中小企業振興条例を全面改定するものです。

わが党は以前から中小業者の声にもとづいて、同条例の抜本改正を議会でも、中小企業振興審議会でも求めてまいりました。そうした中で、改正が提起され、その中身についても、中小企業、とりわけ本市企業の6割を占める小規模企業が地域経済に果たしている役割、大企業・金融機関の社会的責任、中小企業の実態把握についての市の責務などを提案し、一定の部分が今回の条例案に盛り込まれることになりました。

また、中小企業振興審議会が、改定される条例案にも引き続き位置づけられましたが、同審議会を真に「中小企業振興に関し広く意見を反映」する場としていくためには、部会の設置や十分な審議時間、悉皆調査の実施などが必要であり、改善を強く求めておきます。

地元中小業者や議会での論戦によってこうした動きが出てきたものの、本条例案には重大な問題があることを指摘しなければなりません。

最大の問題は、「海外市場への事業展開」「観光及びMICEの振興」「企業立地及び産業集積の促進」などの施策推進が条例案に書き込まれたことです。

これらの施策は、地元の中小企業からの要望はほとんどなく、実質的には大企業の系列会社やグローバル企業の応援に終わっているのが実態です。

髙島市長は、安倍政権がすすめるアベノミクスの先兵たることを買って出て、地元中小業者・市民にはほとんど経済効果のない「観光・MICE」に熱中し、さらに「国家戦略特区」にも名乗りを上げ、規制緩和、法人税減税、解雇指南などにより外からの「呼び込み」を推し進めてきました。髙島市政のもとで、もうかったのは一部の大企業・グローバル企業だけ、小規模企業の数は減少し、市内で働く人が受け取る雇用者報酬は減り続けたのであります。

条例案に「海外市場への事業展開」「観光及びMICEの振興」「企業立地及び産業集積の促進」を盛り込むことは、こうした市長のアベノミクス追随政策を「中小企業のための成長発展の促進」の名前で根拠づけ、拡大する、きわめて危険な仕掛けを埋め込むものです。

ただでさえ3億8千万円、本市予算のわずか0.04%しかない中小企業振興予算は、地元中小業者ではなく、「観光・MICE」や海外展開で恩恵を受けるグローバル企業に割かれることになりかねません。

わが党は、この条項の該当部分の削除を要求しましたが、市長は応じませんでした。

よって、アベノミクス追随を根拠づけ、中小企業施策を後退させる恐れのある条項を含んだ本条例案に、わが党は賛成することはできません。

次に、議案第159号、「福岡市公園条例の一部を改正する条例案」についてです。

本議案は、2016年度に作成した「福岡市みどり経営基本方針」のもとで「都市のにぎわい」づくりを公園にまで適用し、「にぎわい」に貢献するイベントやカフェ、レストランなどの設置のための公園使用料、いわゆる「借地料」を改定するというものです。

もともと今回の改定は、「天神ビッグバン」の目玉の一つとして、水上公園の一部を西鉄が借り上げて商業施設「シップスガーデン」を建設したものの、その「借地料」が1平方メートルあたり月900円と、近隣の土地と比べてあまりに安すぎることが、市議会や市民から批判を受けて、行われたものです。

住宅都市局は昨年の決算特別委員会で、固定資産税路線価から割り出した水上公園の土地価格、1平方メートルあたり180万円をもとに算出した「借地料」として、「約4500円」と答弁していました。ところが今議会においては、その半値以下の「1915円」になると説明しました。

その根拠についてわが党が第4委員会でただしたところ、当局は「土地の立地や都市公園としての利用制限などを総合的に勘案」した、などと言って、土地価格を大幅に引き下げたことを正当化しようとしたのであります。

しかしながら、都心部の公園を民間企業に貸し出すこと自体、前例がなく、市長の勝手な判断で、このように「借地料」を値引きしてやることは、公正であるべき行政を歪めるものに他なりません。

さらに、この不当に安い「借地料」さえ、西鉄に対して適用するかどうかについては、本会議でも委員会でも、市は明言しませんでした。これでは「市長は、改定された金額さえ西鉄に払わせる気は無いのだな」と言われても仕方がありません。

そもそも公園は休息やレクリエーション、災害時の避難場所としての役割が都市公園法上、位置付けられており、「原則として建築物によって建ぺいされない公共のオープンスペース」であることがその運用指針にもうたわれています。

ところが、髙島市長は、「にぎわいの創出」などと称して、公園を民間企業のもうけの場にして、カフェやレストランなどをどんどん建設する方針を持ち込もうとしています。

公園本来の役割を変質させ、特定企業のもうけづくりの場に変えようとする、本議案に、わが党は反対するものであります。

最後に、わが党が賛成する議案のうち、議案第156号、2017年度一般会計補正予算案、保育所整備および保育士確保の支援について、意見を述べておきます。

今回の補正は、来年度、入所申し込み児童数が想定を上回るとして500人分の保育所等の追加整備のために約6億円、保育士確保のために家賃補助として約9000万円、合計6億9000万円を増額するものです。

本会議および委員会の審議において、500人分で未入所児童が解消できるのか再三ただしましたが、市は「解消する」とは一切答弁できませんでした。「待機児さえ何とかなればいい」という極めて消極的な姿勢が浮き彫りになったのであります。市有地の無償貸与なども含め、保育所を抜本的に増やす手だてをとるべきです。

保育士確保のための家賃補助についても、保育士の半数を占める非正規をはじめから排除した上、3年半という期限を切り、金額は月額わずか1万円という、吝嗇(りんしょく)ぶりであります。

この議案が出されてから、共産党市議団として現場の保育士のみなさんと懇談をしましたが、「期限を切られる方が逆に不安になる」「同じ仕事をするのに、補助がある・なしの差をもうけるのは、納得できない」などという強い不満の声をお聞きしました。

非正規の保育士にも適用するとともに、補助の期限は切らず、近隣の都市にならって金額も大幅に引き上げることが必要です。さらなる改善を強く求めておきます。

以上で、わが党の討論を終わります。